作曲の手順もいろいろあると思いますが、僕はメロディを作ってからコードをつけるほうが結果的にいいものになることが多いです。
しかしこの「メロディにコードをつける」作業、どうも人に教えづらいんです。
正解は1つではない、でも明らかに不正解(ってあんまり音楽で言いたくはないけどさ)っぽいものも存在する。
今回はその正解不正解のラインを探っていきたいと思います。
最初に断っておきますが、対位法・和声法的な考え方は一旦棚に上げて、ポピュラー音楽のコード進行を考えます。
題材はこちら。Key=Cです。
今適当に作りましたが、結構何でも合いそう。
これに様々なコード進行を当てはめていきます。
C(トニック)から始まるやつ
必ずコードトーンから始まることになりますね。
まずOKパターン。
①C-G/B-Am-C/G
②C-G/B-C7/Bb-F
ともにベース音が下降していくパターンです。
問題ないですね。
②は3つめのコードでメロディと一瞬ぶつかるのでグレーかもしれません。
③C-F-G-C
シンプル。シンプルすぎて逆に少し稚拙ではと感じるが、アレンジとかジャンルによってはナシではない。
④C-Dm-Em-F
上昇パターン。これも大丈夫。
⑤C-Caug-C6-C7
augのソ#とメロディのソがぶつかってますが、一瞬なのでOKと判断します。
ちなみに構成音の似ているC-E7-Am-C7でも大丈夫です。
次にNGパターンと手直し例。
⑥C-Am-Dm-G
「最もスムーズなコード進行」として有名なこいつですが、合わないこともあります。
しかしこれはメロディとベース音がぶつかっているわけではないので、内声(と言っていいのだろうか、ルート音以外の音)をいじれば手直しできるかもしれません。
最後のGとメロディのぶつかりがヤバイので、Gをベースに、Cを含みつつある程度複雑な響きのものに変えてやります。メロディのドと3度の関係にある音が含まれるので、F/Gを採用します。他のコードも、これに従い4和音に変更します。
⑥’CM7-Am7-Dm7-F/G
あえて使う場面は少ないかもしれませんが、なくはない、くらいにはなりました。
⑦C-G-Am-Em
NGというほどではないのですが、普通はCM7/Eと書きます。あるいはオケが完全にEmでボーカルだけドを歌ってるとしたら、たぶん変です(否定はしないけど)
響きというより表記がNGです。
F(サブドミナント)から始まるやつ
OKパターン。
⑧F-G-C-Am
⑨F-G-E7-Am
⑩F-G-Am-C7/Bb
すべて上がっていくパターンですね。
⑪F-Em-Dm-C
ダイアトニック下降パターン。このまま曲が終わりそう。
⑫FM7-Fm7-Em7-Ebdim
サブドミナントマイナー含むパターン。響きが単純だとサブドミナントマイナーの意味が薄いので4和音にしました。
NGパターン。
⑬F-D7/F#-G-Am
F#とメロディがぶつかってます。ルート音がF#でソファミレときてGに繋げなければならないとなると、さすがにキツイです。
G(ドミナント)から始まるやつ
⑭G-G#dim-Am-C7/Bb
Gから半音ずつ上がっていってます。Cメロとかに使われそう。
その他マイナー系
少ないのでまとめます。
⑮Am-F-G-C
出だしがコードトーンじゃないので収まりが悪く聞こえるかもしれませんが、サビ二週目でコードに変化をつけるところではアリになりそう。
⑯Am-AmM7/G#-Am7/G-F#m7(b5)
やたらコード表記がややこしいですが、Amからルート音が半音ずつ下がっていってるだけで見かけほど難しくないです。なんか悲劇的ですね。
⑰Dm-G-Em-Am
ラスト。よくヒット曲にある進行。Dmでメロディがソなのがちょっとスカスカ感あるかな、と思ったのですが、オルガンの音色のおかげか大丈夫でした(ピアノだったらあんまり印象よくなかった)
分析とまとめ
さすがに存在するコードすべての組み合わせを考えるわけにはいかないので、今回はよくあるコード進行に絞って片っ端から試しています。よくあるコード進行というのは、ベース音や内声がきれいに流れたり4度で進行したり、それだけである程度の物語性がうまれるものです。なので初心者の人はまずコード単体よりもコード進行を覚えましょう。
また、今回対位法・和声法は抜きにして思いっきりポピュラーのコード進行だけで書いてますが、OKのコード進行の中でもあまり使わんだろうなぁという「ちょっとした違和感」があるものは対位法・和声法的には微妙です(例えば、3つ目のコードのルート音か5度の音が2小節目のメロディと重なるとあまり良くは聞こえなかったり。このあたり微妙で、きっちり4声くらいで別れていれば禁則には反していないとしても、コード楽器とメロディという組み合わせになるとなんか並達8(5)度や間接8(5)度っぽく聞こえてしまうという・・・)
そういう意味で、あえて意図がなければ①や⑨を選びますよね。場面が許すなら⑫も好き。
さて、基本的にはルート音の流れさえよければ、メロディとぶつかっていても概ね問題ないことがわかります。⑥の手直しや⑩の⑯終わり方を見れば、多少ぶつかっていても内声を変えれば聞けるものにはなることが多いように思います。(素直な3和音から内声を変えると不安定になることが多いので、次のコードで解決させてやる必要は出ます)
⑬だけが例外で、構成音ファ#ラドレの上にソとファ(ルート音から長7度と短9度)が来て、しかもGにつなげるためにはファ#とドのトライトーンが入っていなければならない・・・という要求を満たすコードはさすがにありません(無理やり作れば別ですが)
やはりセカンダリードミナントは使い所が限られるようです。
この例だけではとても一般化できるものでもありませんが、
・ダイアトニックスケールだけでできたメロディは、ダイアトニックコードだけでできたコード進行か、その内声を変化させたものであればおかしくは聞こえない
・ルート音に対してメロディが長9度であれば大丈夫だが、短9度になると、ルート音もメロディもダイアトニックスケール上にない限り(Key=Cで言うとルート音:メロディがE:FかB:C)コードをつけることが難しい
くらいは言えるのではないでしょうか。
ほとんどのコード進行が適用できてしまったので、流れの中での選び方の重要度が非常に高いことがわかりました。
そのへんの話はまた今度したいと思います。
まぁこういうの読むのもいいかな。
それでは、 @zoooomy でした。