詞先でのロジカルな作曲のやり方

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どうも、ずーみーです。
皆さんは曲を作る時、歌詞か曲(メロディ)、どちらから作りますか?





歌詞を先に作ることを詞先、メロディを先に作ることを曲先と言います。
(今までしせん/きょくせんと読んでいたんですけど、wikiでの読み方はなぜかしさき/きょくさきとなっていました。聞いたことねぇ・・・)
僕は自分のバンドやソロ曲はもちろん、提供曲も状況が許せば詞先です。
コツを掴めば曲先よりも狙って良い曲を作りやすいと思うので、ぜひチャレンジしてみてください。

僕は歌詞は他の人に書いてもらってますので、歌詞の書き方ではなくメロディの作り方のお話になります。

詞先は曲先よりも難しい?

詞先は難しいと言われがちですが、「ただでさえ曲を作るのは難しいのに、歌詞の制限まであったら作れるわけがない!」という思い込みです。
実際は逆で、作曲に限らず、何でもやっていい状況よりもある程度の制限があったほうが物事は決まりやすいんですよね。絵でも今晩の献立でも、まったくの自由よりも「りんごの絵を描いて」「中華がいい」などのある程度の制限や枠があったほうが人は自分のやることをはっきり決められるのです。
歌詞からメロを作る具体的な方法論さえあれば、難しいことはありません。

詞先のメリット・デメリット

詞先のメリットはずばり、「歌詞を大切にできる」ことです。
歌詞は、メロディよりも具体性の高い表現です。歌詞がメロディの制限を受けると助詞や言い回しなどが変わり意味が変わってきます。これも前述した制限ではあるのですが、歌詞を制限すべきものはテーマや文体であり、メロディである必要はないのではないかと言うのが個人的な考え方です。メロディが制限するのは字数やイントネーションであり、言葉づかいや世界観をブレさせますが、テーマや文体は純粋にそれらをより鋭利なものにするからです。

デメリットは、作詞家が自分でない場合、作曲のしやすさが作詞家の能力に大きく依存するかたちになることです。今僕がやりとりしている作詞家の方々は能力が高いので、1コーラスのボリューム感・1、2コーラス間の文字数などで全くストレスは感じませんが、これはかなり恵まれた環境なのだろうなと思います。
また、どうしても作詞家は4行単位で歌詞を書きがちなので構成が保守的になりますし、「ああ」などフェイク寄りのフレーズは生まれにくくなります。全体的にあそびが生まれにくくなるんですよね。ただこれらは、作詞家とのコミュニケーションなどで解決できる問題です。

具体的なメロディの作り方


具体的な方法論を弊バンド白の無地の「量子コンピューターおじいちゃん」を例に解説していきます。ちょっと数字が多くなるけどがんばって!

まず小節数を決める

Aメロがこちらです。数字は文字数(1音節1文字)

ぼくのおじいちゃんは(9)
脳みそが量子コンピューター(14)
最新医療技術で(11)
再び息吹き返した(12)

合計46文字です。
これを、Aのメロとして自然な長さに収めなければいけません。
例えばこれを4小節で歌い切ろうとすると、1小節平均11.5文字です。8小節だと平均5.75文字、16小節だと平均2.875文字になります。
4小節だと短いですし、1小節に11.5文字だと8分音符ではおさまりません。かと言ってゆっくりな曲調にもできない歌詞なのでNG。
16小節だと1小節に3文字以下となりメロディが作りづらいのでNG。
よって8小節を選ぶことにします。

文字数のばらつきの調整

メロディを作る前に、文字数のばらつきを整えます。整えると言っても、歌詞を書き換えるわけではありません。着目すべきは、
・二重母音(「じい」「りょう」など、母音が連続する音)
・撥音(「コン」「ちゃん」など、「ん」)
・促音(「はっ」「れっ」など詰まる音)
・ウ段の音(「くら」「つら」など、英語のように子音のみ発音すればいい音)
です。
これらの文字列があるところは1つの音符に乗せてしまえるので、これで作曲上の字数を整えます。

ぼくのおじいちゃんは(9)
脳みそが量子コンピューター(12)
しんりょう技術で(9)
再び息吹き返した(12)

太字のところを1文字ぶんにまとめることによって、作曲上の字数を同じにしました。

メロディを区切る箇所を決める

いよいよ実際のメロディ作りの段階に入ります。まず歌詞を意味の通る最小単位まで分解します。具体的には、歌詞を分節(や、意味上区切っても大丈夫なところ)で区切っていきます。

ぼくの/おじいちゃんは/(3/6)
脳みそが/量子/コンピューター(5/3/4)
しん/りょう/技術で(3/2/4)
再び/息吹き/返した(4/4/4)

となります。(完全な文節でないといけないわけではないので、個人差はあるかもしれません)
ここで、1行目と3行目、2行目と4行目のように対応する行を見て、メロディの最小単位を何文字ずつで作っていけばいいかを数字でまとめて行きます。
たとえば、1行目の「ぼくの」と、3行目の「最新」はそのまま対応しますが、1行目の「おじいちゃん」は一文節なので、3行目の「医療技術で」は途中で区切るわけにはいきません。
また、「脳みそが量子コンピューター」は5/3/4、「再び息吹き返した」は4/4/4なので、「脳みそが量子/コンピューター」「再び息吹き/返した」と区切ることになります。

ぼくの/おじいちゃんは/(3/6)
脳みそが量子/コンピューター(8/4)
しん/医療技術で(3/6)
再び息吹き/返した(8/4)

こうして、作るべきメロディの最小単位が見えました。
この作業と字数調整は不可分ですので、行ったり来たりする必要があるかと思います。

メロディを作る

ここからがやっとセンスの入ってくる段階です。後半は同じですので割愛するとして、前半を取り出すと、

ぼくの/おじいちゃんは/(3/6)
脳みそが量子/コンピューター(8/4)

ですので、まずは3音と6音のメロディを2小節内に、8音と4音のメロディを次の2小節内に配置していきます。これはもう曲によって千差万別でパターン化はできません。注意すべきは、
・曲を通して不自然なイントネーションのところがないか
・ボーカリストが歌いやすいか
ですね。
ここまでくれば臨機応変に対応してもよいので、イントネーションに関して不自然なところがあれば1番と2番のメロディを変えるなどすると、かえってそれが曲としての「広がり」をもたらすことがあります。
歌いやすさに関してはこちらの記事で触れています。

ここが正念場ですので、ミクロなフレーズを作って並べ、マクロな視点(Aメロ全体、あるいは曲全体)から俯瞰して判断する、という工程を納得が行くまで繰り返します。場合によっては字数調整まで立ち戻ります。あるいは、作詞家に修正をお願いするのも作品のクオリティを高めるためにはもちろんありでしょう。

これが僕の詞先スタイルの全容です。




詞先をしている有名バンド・アーティスト

僕も所詮はwiki頼みなのでへーって感じですが、いくつか。研究すると何か見えてくるものがあるかもしれません。(各曲が確実に詞先かどうかはわかりませんので、なるべく多数の曲を聞いてみることをオススメします。分析、大事)

aiko


僕の詞先作曲の理想形ですね。

BUMP OF CHICKEN


言葉の詰め方から、「語る/話す」に限りなく近いスタイルになっています。

槇原敬之


こちらは、起伏を多めに作って、メロディの力を押し出したスタイルです。

参考になりましたでしょうか。
ではまた、ずーみー@zoooomyでした。




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